ダッシュボードを作ったのに誰も使わないのはなぜ?会議・意思決定から逆算するBI設計

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BIツールを導入し、売上、粗利、案件数、顧客数、稼働率などを確認できるダッシュボードを作った。それでも月次会議になると、各部門が以前から使っているExcelやPowerPointを持ち寄る。

このような状況では、「社員がBIに慣れていない」「Power BIやTableauが使いにくい」と考えたくなります。

しかし、原因がツールだけにあるとは限りません。

ダッシュボードに表示する情報と、会議で実際に行う判断・アクションが結び付いていないことが、使われない原因になっている場合があります。

重要なのは、取得できるデータやKPIからダッシュボードを作るのではなく、「誰が・どの会議で・何を判断し・その後何をするか」から必要な情報を逆算することです。

BIを導入したのに使われないのは珍しくない

BIを導入すると、複数のシステムやExcelに分散していたデータを集約し、最新の状況をグラフや表で確認しやすくなります。

一方で、データを可視化できるようになったことと、その情報が日常の意思決定へ使われることは別です。

例えば月次会議で必要なのが「売上が計画を下回っている原因を特定し、来月の重点案件を決めること」なら、売上実績を表示するだけでは十分ではありません。

計画との差、前年との比較、案件状況、要確認対象など、判断につながる情報が必要です。さらに、その数字を見た後に誰が何を確認し、どのようなアクションを取るかまで決まっていると、ダッシュボードを会議の中へ組み込みやすくなります。

「見える化」が目的になると使われにくい

BI導入時には、「社内データを見える化する」「ExcelをBIへ置き換える」といった目標が置かれることがあります。

見える化自体には価値があります。しかし、そこだけを目的にすると、取得できるデータを順番にグラフ化し、ダッシュボードへ追加していく設計になりやすくなります。

その結果、売上、粗利、顧客数、案件数、商談数、在庫、工数、稼働率など多数のKPIが並ぶものの、「今日この画面を見て何を決めればよいのか」が分からないダッシュボードになることがあります。

DASHBOARD DESIGN APPROACH
Dashboard First
利用できるデータを確認
KPI・グラフを多数作成
ダッシュボードへ配置
利用方法を後から考える
Decision First
会議・利用場面を決める
判断テーマを決める
必要な質問・KPIを決める
アクションまで接続する

Dashboard Firstが常に間違いという意味ではありません。既存データを探索し、未知の傾向を発見する分析にも価値があります。

ただし、定例会議で継続的に使用するダッシュボードでは、利用目的を先に明確にした方が設計しやすくなります。

40種類のKPIがあるのに月次会議ではExcelを使う架空例

説明用の架空企業を考えます。

DX部門が全社向け月次ダッシュボードを構築し、売上、受注、粗利、案件数、顧客数、商談数、平均単価、解約率、在庫、工数、稼働率、各部門KPIなど約40種類の指標を掲載しました。

40という数字は説明用の架空例であり、40個以上なら多すぎるという意味ではありません。

しかし月次会議では、営業は営業Excel、経理は月次Excel、経営企画はExcelの数値を貼り付けたPowerPointを使い続けています。

そこで「なぜBIを使わないのか」を確認すると、例えば次のような理由が見つかる場合があります。

  • 40種類のうち、会議で実際に議論するKPIは一部だけ
  • 数字が悪化したとき、次に何を見るか分からない
  • BIとExcelでKPIの定義が少し違う
  • 個別案件の確認はExcelの方が行いやすい
  • 担当者コメントや背景情報がBIにない
  • 重要な指標と参考指標の違いが分からない
  • そもそも「この画面で何を判断するか」が決まっていない

この場合、必要なのは単純なBI操作研修や、40種類のKPIを一律に減らすこととは限りません。

まず月次会議で何を決めているのかを確認し、その判断に必要な情報を再整理します。

使われるダッシュボードを作る7つのステップ

1. 利用する会議・業務場面を決める

「全社員向けダッシュボード」のように対象を広くする前に、まず具体的な利用場面を決めます。

例えば、月次経営会議、週次営業会議、部門別収益レビューなどです。

利用場面が違えば、必要な更新頻度や指標、詳細度も変わります。

2. 誰が何を判断するか決める

次に、参加者がその会議で決めることを整理します。

例えば、「売上が計画未達の場合に重点案件を見直す」「粗利率が悪化した場合に原因となる商品・案件を確認する」などです。

ダッシュボードの目的を「売上を可視化する」ではなく、「売上計画に対して対応が必要か判断する」と置き換えると、必要情報が具体化します。

3. 判断に必要な質問を書き出す

判断テーマから、会議で答えるべき質問を作ります。

  • 売上は計画に対して進んでいるか
  • 差異が大きい部門はどこか
  • 粗利率悪化は特定の商品・案件に集中しているか
  • 追加確認が必要な案件はどれか

KPIを先に選ぶのではなく、質問を先に決めます。

4. 質問に答えるKPIだけを選ぶ

質問が決まったら、それに答えるために必要なKPIを選びます。

売上進捗を判断するなら、売上実績だけでなく計画値との差が必要かもしれません。原因確認には部門別・商品別等の内訳が必要になる場合があります。

一方、会議の判断に使わない指標までトップ画面に置く必要はありません。

5. 比較対象・確認条件を決める

単独の数字だけでは、良いのか悪いのか判断できない場合があります。

必要に応じて、計画、前年、前月、予算等との比較を設定します。

何と比較するかはKPIによって異なるため、すべての指標に同じ前年差・前月差を付ける必要はありません。

6. 数字が悪かったときのアクションを決める

ダッシュボードで差異を見つけても、その後の行動が決まっていなければ、毎月同じ数字を見るだけになりやすくなります。

例えば、粗利率が想定より低い場合は対象案件を確認する、案件数が不足している場合は営業施策を確認する、といった次の確認・行動を整理します。

7. 実際の会議で使い、不要な指標を見直す

設計時に必要だと思ったKPIでも、実際には議論されないことがあります。

月次会議で使った指標、追加で必要になった情報、結局Excelを開いた場面を記録し、ダッシュボードを継続的に見直します。

DASHBOARD TO ACTION LOOP
KPI
現在の状態を確認する。
Deviation
計画・目標・過去実績との差異を確認する。
Question
なぜ差異が発生しているか追加確認する。
Decision
対応が必要か、どこを優先するか判断する。
Action
担当者・施策・確認事項を具体化する。
Next Review
次回会議で変化・施策結果を確認する。

KPIは何個までならよいのか

「ダッシュボードのKPIは5個まで」といった一律の基準を置く必要はありません。

必要な指標数は会議の目的、利用者、対象業務によって異なります。

ただし、トップ画面にすべての指標を同じ重要度で表示すると、何を見るべきか判断しにくくなります。

そこで、指標を役割別に分ける方法があります。

階層役割表示方法の例
Primary Indicators会議で定期的に確認し、判断の起点になる指標トップ画面
Diagnostic Indicators差異や異常があった際に原因を確認する指標関連ページ・詳細レポート
Detail / Drill-down顧客・案件・商品・明細等の詳細情報ドリルダウン・明細画面

指標を削除すること自体を目的にせず、「トップ画面に置く必要があるか」を問い直します。

Excelが残る理由を調べる

BI導入後もExcelが使われていると、Excelを廃止しようと考えることがあります。

しかし、まずExcelで何をしているのか確認した方がよいでしょう。

  • 担当者コメントを書き込む
  • 個別案件を確認する
  • 一時的なシミュレーションをする
  • 条件を変えながらアドホック分析する
  • 会議中に数値を補足・修正する

といった用途があるなら、単純な置き換えでは解決しない場合があります。

BI側へ必要な情報・機能を追加する方法もあれば、定型モニタリングはBI、シミュレーションや個別分析はExcelという役割分担も考えられます。

BI利用率は閲覧数だけで評価しない

BIが使われているか確認するために、閲覧数や利用者数を見ることは有用です。

例えばPower BIではUsage Metricsを利用し、レポート・ダッシュボードの閲覧状況や利用者等を確認できます。

ただし、閲覧数だけで業務価値を判断しないようにします。

月次経営会議で使うダッシュボードなら、毎日閲覧される必要はありません。反対に、毎日開かれていても「見るだけ」で、判断や行動が何も変わらない可能性もあります。

そこで、利用状況と合わせて次のような点も確認します。

  • 重要な会議で実際に使用されたか
  • 従来の手作業集計を減らせたか
  • 数字の確認時間を減らせたか
  • 要確認対象を見つけやすくなったか
  • ダッシュボードを基に具体的な判断・アクションが行われたか

利用頻度ではなく、「そのダッシュボードが何のために存在するか」に合わせて評価します。

未使用レポートをどう整理するか

BI運用を続けると、似たレポートや使われなくなったダッシュボードが増えることがあります。

利用ログから未使用・低利用コンテンツを確認することは、棚卸しの出発点になります。

ただし低利用だからすぐ削除するのではなく、次の点を確認します。

  • 利用頻度が低いことが本当に問題か
  • 年次・四半期等の低頻度業務で使われていないか
  • 他のレポートと役割が重複していないか
  • Ownerが存在するか
  • 廃止しても業務上問題がないか

利用ログを「削除判定の自動ルール」ではなく、確認対象を見つける材料として使います。

使われないダッシュボード診断チェックリスト

確認項目確認内容
利用場面このダッシュボードを使う会議・業務が決まっているか
利用者誰が使うのか明確か
判断利用者が何を判断するのか決まっているか
KPI各KPIがどの判断へ使われるか説明できるか
重要度トップ指標と詳細指標を分けているか
定義Excel、BI、会議資料でKPI定義が一致しているか
比較計画・目標等、判断に必要な比較対象があるか
アクション数字が悪化した場合に何をするか決まっているか
ExcelExcelを使い続ける理由を確認したか
利用状況閲覧数・利用者等のログを確認しているか
業務価値閲覧数だけで成功を評価していないか
棚卸し未使用・重複レポートを定期的に確認しているか
Ownerダッシュボードの管理責任者が決まっているか
見直し会議・業務変更時にKPIも更新しているか

まず次の月次会議で、実際に議論したKPIに印を付けてみてください。

ダッシュボードへ掲載している指標と、実際に判断へ使った指標が大きく異なるなら、「何を表示するか」ではなく「何を判断する会議なのか」から見直す余地があります。

まとめ

BIダッシュボードが使われない場合、すぐにツールや利用者のITリテラシーだけを原因と考える必要はありません。

取得できるデータやKPIを先に並べた結果、会議での判断やアクションとの関係が分からなくなっている可能性があります。

まず、どの会議で誰が何を判断するのかを整理し、その判断に必要な質問、KPI、比較対象、アクションを決めます。トップ画面には重要情報を置き、原因分析や明細は詳細レポート・ドリルダウンへ分けます。

また、Excelが残っている場合は単純に廃止するのではなく、Excelでしか行えていない作業を確認します。BIへ移すべき機能なのか、役割分担した方がよいのかを判断します。

SCI総合研究所株式会社のRASHINRAでは、ダッシュボードやBIツールそのものを起点にするのではなく、経営会議・部門会議で何を判断するのかを確認し、その判断に必要なKPI、比較方法、データ、アクションを整理します。

「ダッシュボードを作ったが会議ではExcelを使っている」「KPIが多すぎて何を見るべきか分からない」「BIを刷新すべきか運用を見直すべきか判断できない」といった段階から、データを意思決定へつなげるための論点を整理できます。